"静かな社会"と"活気ある社会" の選択

橘川雄一|2025.4
市民・建築NET(奥村珪一会長・前川國男事務所OB)という建築の保存を主目的とした会が、「都市開発緩和制度の解剖学(大方潤一郎)ー市民が裏技開発に対抗するために」
とタイトルして、今の再開発の法的な解釈を"無理筋"として読み解くシンポジウムを開いた。
ターゲットは、「明治神宮外苑の再開発」。既に東京都は許可を出しているが、法解釈、東京大学都市工学科大方名誉教授がその無理筋を語るという主旨である。
私も公園(オオヤケのソノ)だと思っていたので、そこにビジネスの匂いが入り込むのには違和感がある。「内苑を守るためにも外苑での開発が必定」という論理にも。ならば日本一の入場者数を誇るのだから豊かな都民から明治神宮運営の必要資金は取れそうにも見える。サザンオールスターズ桑田佳祐も「relay-杜の詩 2025年」で保存派を支援した。シンポジウム参加者はもともと"保存派"だからみな大方先生の話に手を叩いて賛意を示していた。

東京証券取引所プライム市場の会社数削減の話がある。「マーケットに評価されない企業(=「昨日、今日そして明日も"同じ(変化のない)会社"でいいと考える経営者だったらプライム市場から出ていって欲しい」という流れが株式マーケットにある。確かに1980〜1990年代の日本企業の実力を知る私の世代には今の日本は歯痒い。デフレ社会を許容してきた会社経営者にゲキを飛ばしたい気持ちはわかる。"もっと日本にマネーを呼び込むのだ"と。

都市空間の保存運動"と"昨日今日そして明日と同じ経営でいいのか"という精神は"money"目線で見ると同根、マネーを"動かそう"とするのか、"静かにしてくれ"というのかの差。
"静かにしてくれ"派は、
「何故、巨大な資本を入れて昨日と違う都市を作ろうとするのか」だし、
"マネーを動かす"派は
「昨日までの静かな日本株式市場はダメ。株式市場にもっとマネーを入れてくれ。この大変革期に会社が変革を遂げなければ日本は世界から見放される」と。

"静かな都市、静かな株式市場"、"活気に満ちた都市、活気に満ちた株式市場。どちらも正論。
私は昨日と同じ生活を送るのは苦手なタイプなので、"活気派"です。

以下は未来の推論。
ただ今はまだどこか中庸の線で収まっているが、これからAIが入る世の中になるのです。
あの巨大プラットフォーマーが作るアルゴリズムに日本人はついていけるのかな、という心配が正直ある。人間が"AI 変革"についていけない時代が目の前にきていると、「NEXUS 情報の人類史(ユヴァル・ノア・ハラリ著)」は語る。ホモ・サピエンスが対応不可な、限り無い超越した社会がこのままだと待っていると。対論者(反対意見を語る方々)を配慮をした解決策でなく、徹底してmoney追求の"都市"そして"企業"が目の前に現れる。 未来の予言は面白くないかもしれません。我々ホモサピエンスは、たとえ意見が違っても対論者の尊厳を配慮した対応が相応しい、とは私の意見です。