バリアフリー法がもたらした社会

橘川雄一|2024.1
谷口吉郎設計"東京国立近代美術館"、芦原義信設計"数寄屋橋ソニービル"、ともに床のレベルが半階構成或いは1/4階構成になっていた。次の階に行くのに、1/2或いは1/4階分のステップを上がる。アーティキュレーションが曖昧で非凡さが感じられる空間だった。今はない。ソニービルは解体、近代美術館は半壊構成部分を作り直して、通常の階段室の展示空間としている。
 「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(バリアフリー法) が、平成18年(2006年)12月20日に施行され、斜路かエレベーターで階の移動が出来ないと認められないからだ。車椅子対応である。
個人的に言えば、自由な空間構成の出来ない法律には、ネガティブな態度をとっていた。

実は4年前に私の妻が車椅子生活になってしまった。病からである。ここ4年以上妻の車椅子を押す生活を続けているが、このバリアフリー法がどれだけ車椅子生活者にとって、普通の生活の世界にいさせてくれる法律かを理解している。最近では玄関の框の段差もなくなっている。本当にどこでも不自由なく行くことができる。

「全ての人が平等に」と言うスローガンで本当に誰でもが自由に"社会"に出てゆくことに支障がなくなっている。私はいまそれを実感出来る日々を送っている。でも"数寄屋橋ソニービル"、魅力的だったなあの空間構成は。