都心の土の中

橘川雄一|2024.3
千代田区JR駅近く大通り沿いの場所で設計をしている。所謂"改築"、既存ビルがありそれを解体しての新築である。
この様な都心域は新築時の所有者が"そのまま50年所有"というケースは珍しく、途中建物売買をしているケースが多く、建物所有者が新築時の"建築確認申請書"をそのまま有しているケースはなかなかない。
既存建物の図面がない事は実は解体時にとても困る。
2敷地で仕事をしているのだが、A敷地は既存建物の設計図面、確認申請書ともにあった。B敷地はその双方ともに失在している。A敷地は図面通り地下の躯体が出て来るので予定どおりの工事費と工事期間で解体ができた。
B敷地は図面が全くない。この様に図面がない建物の解体工事の難しさは大変なものがある。既存建物周りに余地がないので地質調査が出来ない。杭の有無さえ分からない。
土の中の状況が分からないので杭の設計すらできない。
解体工事の常套手段として既存建物地下外壁を残し土留めとして、その内側に新築の外壁を作っている。ただ段々柱位置が内側に寄ってくる。
柱が内側に寄ったプランは建物としては使いにくい。故に柱を外側に出そうとすると、既存地下外壁を解体しなくてはならなくなる。そうなると地下解体費はとんでもない高額になると同時に解体期間も年単位で掛かる。今の事例で言えば解体費は新築工事価格と同額、解体期間は3年。
多分大きな敷地ではない場合はみな同じ苦しみを味わっているに違いない。