『アポロの杯(三島由紀夫著)』が語るパルテノン

橘川雄一
パルテノン神殿

成田から12時間飛行機に乗り夕方ローマに着いた。気持ちのいい秋の風を感ずる季節、ただ落ち着かずそのままギリシャ・アテネ行きの飛行機に乗りやっと夜にアテネ空港に着陸した。翌日夜の飛行機でアテネから再度ローマに戻る予定を組んでいたのでアテネ滞在は12時間のみ。アテネ訪問の目的は、先ずパルテノン宮殿を体感する事。2番目は“エーゲ海クルーズ”を体感する事。パルテノン宮殿は勿論翌日体感出来ました。朝早くからホテルを出て、数学記号文字での案内板を読みながら電車で一路パルテノンへ。

誰もが“感動”というものを経験するパルテノンですが(『アポロの杯(三島由紀夫著)』美しい言葉で語る美学を言葉だけで理解していたが、ギリシャの空気の中で感じるパルテノン、私も感動しました)。大理石の山の上に建つ大理石の神殿。あれは建物だけの美学ではない、自然地形との一体で成り立つ美学です。三島由紀夫の感動が理解できました。1000年に一人の天才と磯崎新が定義した建築家フィディアス(あと二人はミケランジェロ、ル・コルビュジエ)故に組み立てられる建築、石から彫られる塑像。更に言えば傷付いた身体で誇り高く建つ“廃墟の美学”が満ち溢れた建物、腕をもぎ取られながら歴史に燦然と輝く塑像“ミロのビーナス”と双璧をなします。

パルテノンを見上げる場所にあったギリシャっぽいレストランで昼食をとりエーゲ海の港に急いだ。なんといっても5時間で“エーゲ海クルーズ”をしなくてはならない。なんの予約もせずにです。ピレウス港では多くのクルーズ船が停泊していた。数学記号のような文字のギリシャ語、英語案内を読んでも“1週間クルーズ”の文字ばかりが目に入る。ただ“神が微笑んだ”。英語の通じる初老の男性がいた。とても親切だった。一番近い島“エギナ島クルーズ”の存在そして尚かつ切符の販売所も指差してくれた。ピレウス港から10分後の出航。妻と走って券売所に行き券を購入した。水中翼船だった。エギナ島には30分で着いた。

2時間後の帰りの便を予約し、古代遺跡が点在する地域をひたすら歩き回り、疲れて“エーゲ海に面するレストラン”でギリシャの食材満載の食事をとった。たったの“12時間の旅程”で、パルテノンとエーゲ海クルーズを体感することができる事、“神が微笑んだ”と心から思った。幸せな時を妻と共に過ごし、元の港ピレウスに戻り、夜の最終フライトでローマに飛び立つことが出来た。

あの蜜実な時は今でも身体に残っている。忙しない私しか考えない旅程。付いてきてくれた妻もそして私もよく身体が保ちました。しかもこのあとローマ、フィレンツェ、ベネチアと旅は続くのですから。